寄生虫は私たちの身近に、たくさん存在しています。まずは、海産魚にひそむ寄生虫について紹介します。
サバ、スルメイカなど200種以上の魚には「アニサキス」の幼虫(体長2~3センチ)が寄生していることがあります。
刺し身と共にこの幼虫を摂取すると感染します。胃アニサキス症は、食後2~8時間程度で強い痛みを訴え、悪心、嘔吐を伴うことがあります。治療薬はないため、内視鏡で摘出します。
また、腸アニサキス症では腸閉塞、腸穿孔などと診断され、開腹手術を受けることがあります。感染を予防するには、氷点下20度以下で1日以上、冷凍します。
ホタルイカ、ハタハタ、タラなどの内臓には「旋尾線虫」の幼虫(体長4~8ミリ)が寄生していることがあります。とても細く肉眼で見つけることは困難です。幼虫が寄生したホタルイカなどを食べると、数時間から2日程度で激しい腹痛、嘔吐などを起こすことがあります。
1、2週間後に腹部の皮膚内に幼虫が現れると、強いかゆみを伴うミミズばれが起こります。それが不規則に移動することがあります。ホタルイカの内臓を生で食べる場合は、氷点下30度で4日間以上、冷凍することが大切です。
(日本臨床衛生検査技師会 山本徳栄)
2009 年 12 月 8 日 by admin
食事の欧米化などによって大腸がんが著しく増えています。がんの死亡原因のうち大腸がんの割合は、男性で4位、女性では1位となっています。2日分の便を採取して調べる便潜血検査の重要性もますます高まっています。
もし、検査の結果が「陽性」だったら、どうすればいいでしょうか。
実は、早期のがんや形が平らながんでは、便潜血検査が陽性になることはあまり多くありません。陽性となるのは痔によるものがもっとも多く、ポリープや進行がんの場合がこれに続きます。
統計的には、検査実施者の5~7%が陽性で、その約半数からポリープが発見され、2~4%ががんであるとされています。ですから、陽性になっても悲観的になる必要はありませんが、大腸内視鏡などの精密検査を速やかに受けることが重要です。
逆に、陰性だったとしても安心はできません。進行がんの中でも、出血しないタイプもありますし、たまたま検査の時は出血していなかったという場合も考えられるからです。
大腸がんは45歳以上になると発症率が高まります。陰性であっても毎年、検査を受けることが大切です。もちろん自覚症状がある場合は、精密検査を積極的に受けましょう。
(日本臨床衛生検査技師会 小野 静)
2009 年 12 月 3 日 by admin
住民検診や人間ドックなどで、多くの方が「便潜血検査」を体験されていることと思います。
大腸の内壁にがんがあると、しばしば出血が起きます。その量が多ければ、タール便になったり便器に鮮血が付いたりしますが、微量の出血の場合は見た目では分かりません。潜血検査では、血液のヘモグロビンが便の中に存在するかどうかを調べ、陽性反応があれば、医療機関で精密検査を受けることになります。
胃などの上部消化管に出血がある場合は、ヘモグロビンが消化液の影響を受けるために検出できにくいのですが、腸の場合は微量の出血でもキャッチできるため、大腸がんの早期発見に役立つわけです。
ただし、痔や大腸ポリープでも陽性になるので、陽性イコール大腸がんだと心配する必要はありません。逆に、採取方法が不適切だったりすると、大腸がんがあっても陰性になることがあるので、注意が必要です。
トイレで便を採取するのは気の進まない作業かもしれませんが、説明書に従って、正しく採取してください。2日間採取すると、早期がんの発見率は1日採取の3倍になります。症状がなくても、年に1度は受けるようにしましょう。
(日本臨床衛生検査技師会 冨永博夫)
2009 年 12 月 3 日 by admin
今回は心電図を利用した検査を紹介します。
一般的な「12誘導心電図」は健診などでは10数秒、病院でも長くて数分しか記録しませんので、発作的な異常を見つけられるのはまれです。
長時間の観察には、入院中の患者さんであれば「心電図モニター」で対応し、外来の患者さんには「ホルター心電図」という装置を付けていただきます。24時間の心電図を記録できる装置で、10年ほど前までは、カセットテープに記録していましたが、今はメモリーカード、マイクロディスクなど記憶媒体の軽量化に伴い、小型になっています。
運動により、心筋梗塞などの発作を誘発する「負荷心電図」という検査もあります。患者さんの急な変化に対する薬や装置を備えた場所で、運動負荷をかけます。
手術後に寝たままの状態から数分座ってみるといった軽いものから、しばらく立っておく、距離や時間を決めて歩く、階段の上り下りをする、ペダルをこぐなど、さまざまです。前後や途中の心電図を比較することで、病気の有無や治療経過を判断します。
心電図以外に呼吸の状態を観察する装置を使う「心肺負荷試験」を導入する施設が増えています。
(日本臨床衛生検査技師会 百田浩志)
2009 年 12 月 3 日 by admin
心臓は4つの部屋に分かれており、上2つを右房・左房、下2つを右室・左室と呼びます。 心臓を動かす電気信号は、右房上部にある洞結節から発せられ、4方向に分かれて左右心房を伝わり、洞房結節という場所に収束した後、左右心室の2方向に伝わります。
心電図の波形は、心房の興奮→心室の興奮→心室が元に戻ろうとする―で1グループとなっています。心臓の音を「ドクン・ドクン」と表すならばこのグループが1拍の「ドクン」です。
電気の流れが妨げられている状態や、通常の流れと違う状態になると、波形に異常が現れます。隣のグループとの間隔が近いと頻脈、遠いと徐脈ということになります。また、リズムが一定でなかったり違う形の波形が混入していると、不整脈と呼びます。
狭心症や心筋梗塞の場合、心臓に栄養を運ぶ血管(冠状動脈)が狭くなったり、詰まってしまうことによって、心臓の筋肉に酸素が送られず、本来の電気の流れや心筋の収縮が変化するので、心電図で特徴のある波形が現れます。ほかにも、それぞれの波形によって多くの病気が分かります。
(日本臨床衛生検査技師会 百田浩志)
2009 年 12 月 3 日 by admin
大きな洗濯はさみのようなものを両手両足首に付け、胸には6個の吸盤ー健診でおなじみの心電図検査です。正確には「12誘導心電図」と呼ばれます。
それぞれの電極から得られる波形は、その方向から見た心臓の状態を示しています。右手首の電極は、心臓の右上、左足は心臓の下部、胸の電極は心臓を取り囲むように配置します。過去の波形と比べることが大事で、電極の位置がずれることがないよう、肋骨などを基準に電極の位置が決まっています。
心電図は、心臓関係では最も歴史の古い検査です。得られる情報量が豊富で苦痛もないことから、広く用いられています。人間が電気というものを意識したのが1600年ごろ。筋肉が電気刺激で動いているのを発見したのが1700年代後半、心臓にも電気が流れていると分かったのが1850年ごろといわれています。その微弱な電気信号を取り出し記録する心電図の原型ができたのが、100年ほど前になります。
心電図は心臓を動かしている電気の状態を見る検査ですので、機械から電気が流れてくることはありません。緊張などで力が入ると、正確な状態を得られにくくなるので、リラックスした状態で受けましょう。
(日本臨床衛生検査技師会 百田浩志)
2009 年 11 月 4 日 by admin
「妊娠検査薬」という言葉を耳にしたことのある人は多いと思います。実際に何を検査するかというと、HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを測定します。
このホルモンは、つわりの原因とも言われ、妊娠3カ月でピークを迎え、後は緩やかに減っていきます。妊娠初期につわりが強くなり徐々に治まる傾向があるのも、このためです。HCGは妊娠を継続させるのに必要なホルモンで、妊娠していない人からはほとんど検出されません。
市販の妊娠検査薬の感度は、着床してから5日目のホルモン分泌量に相当します。着床して「予定日に生理が来ない」と気づいた人は、すぐに検査をしても、陽性反応が出ることが多いですが、生理の周期がずれることもあるので予定日の7~10日後に検査をするのが良いといわれています。
陽性になった場合、正常妊娠かどうかはこの検査では分からないので産婦人科で確定診断します。このHCGは、絨毛上皮がんや胞状奇胎といった一部の悪性腫瘍の時にも産生されます。子宮外妊娠や悪性腫瘍だった場合は放置しておくと大変なことになるので、早めの受診をお勧めします。
(日本臨床衛生検査技師会 冨永博夫)
2009 年 11 月 4 日 by admin
結核は昔の病気と思われがちですが、日本で昨年1年間に新たに結核患者として登録された人の数は24,760人。およそ5000人に1人がかかっているのが現状です。
検査には、主に喀痰を用います。最初に行われるのは、抗酸菌の有無を確認するための塗抹検査です。抗酸菌とは、結核菌を含む抗酸性の性質を持つ菌の仲間のことです。
この検査は、スライドグラスに喀痰を塗り付けて、抗酸菌だけが染まる染色を施し、顕微鏡で観察します。
抗酸菌が見られた場合、それが結核菌かどうか確定するために遺伝子検査を行います。それによって結核の診断が付けば、菌を培養して増やします。結核菌は1回の細胞分裂に約15時間かかります。これは大腸菌の細胞分裂と比べると約50倍の長さです。
結核菌の培養には約1カ月を要し、入院加療が長期にわたる理由の一つになっています。培養した結核菌は、治療薬が有効かどうかを調べる薬剤感受性検査に使われます。
塗抹検査が陰性化して、人にうつす危険性が低いと判断されると患者さんは退院となります。このように結核は診断、治療のさまざまな局面で検査が重要な役割を果たします。
(日本臨床衛生検査技師会 小栗孝志)
2009 年 10 月 26 日 by admin
最近、検査相談室を設ける病院を見かけるようになりました。
医師は限られた時間内に多くの患者さんを診察し、説明を速やかに行わなければならない状況にあります。問診や触診、検査結果から患者さんの病状を説明するのに大半の時間を費やしています。
そのため、一つ一つの検査項目について説明する時間は短くなる傾向にあり、たとえば「これガンの有無を調べる検査ですよ」といった程度で済んでしまいがちです。
その結果、「説明を受けたけれどよく分からない」という不満を持ったまま帰られる患者さんが増えてきました。
そこで、こうした不満を解消するために検査相談室が求められ、検査の専門家である臨床検査技師がお答えしています。
ある病院では主治医からもらった検査結果表を持って、患者さんが相談室に来られます。そして臨床検査技師が「これは肝臓の機能をみるための項目ですよ」「腎臓の機能を見るための項目ですよ」などと個々の説明を行っています。
その結果、「医師が依頼する検査の意味がよくわかった」など多くのご意見が寄せられ、好評を得ています。検査について分からないことがあればお気軽に利用してください。
(日本臨床衛生検査技師会 湯浅宗一)
2009 年 10 月 26 日 by admin
狭心症は、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈の異常により、胸痛発作や胸部圧迫感の症状が出る病気です。冠動脈の動脈硬化やけいれんによって、血流が悪くなることで起こります。
運動しているときに発作を起こす労作型狭心症と、明け方の安静時に発作を起こす異型狭心症があり、ともに胸の締め付けられるような痛みが特徴です。発作は、短い人で数分、長い人では十数分続くこともあります。放置すると、心筋梗塞につながることもある病気です。
この狭心症を調べるのは、心電図検査です。両手首・両足首と胸の6カ所に電極を装着し記録します。異常があれば波形に変化が起こり、診断の手助けとなります。
心臓に負荷をかけて状態を調べる検査もあります。トレッドミル運動負荷試験は、電動式ベルトの上を歩き、心拍数を速くして検査します。労作型狭心症の診断に大きな役割を果たします。
また、異型狭心症に有用なのはホルター心電図検査です。胸の4、5カ所に電極を装着し丸1日連続した心電図を記録するとともに、24時間の綿密な行動記録を付けてもらいます。行動と発作との関係をつかむための検査です。
(日本臨床衛生検査技師会 長迫哲朗)
2009 年 10 月 15 日 by admin