おなかの赤ちゃんが順調に大きくなり、安定期である5カ月ごろになると、クラミジア抗原検査、膣分泌物培養が行われます。
クラミジア抗原が陽性なら、卵膜に感染した場合に流産、早産の危険性があるので治療が必要です。また産まれる際に赤ちゃんに感染(産道感染)すると、赤ちゃんに結膜炎、クラミジア肺炎が起こる可能性があります。
膣分泌培養ではカンジダ膣炎や細菌性膣炎かどうかなどがわかり、こちらも治療をします。
血液検査では、貧血の検査に加えて空腹時(食後二時間以上の状態)の血糖値も調べていきます。尿検査で尿糖が数回続けて出ている人や、糖尿病と思われる症状がある人は、もう少し早い時期に検査しているかもしれません。
空腹時血糖値が高い場合は、75グラム糖負荷テストを行います。
まず空腹時の血糖値を測定し、次にブドウ糖の入った甘いサイダーのような液体を飲んでもらい、そこから1時間後、2時間後の血糖値をそれぞれ測定し、空腹時、1時間値、2時間値の二つ以上が規定値を超えると「妊娠糖尿病」と判断します。
こうした耐糖能異常は、ほとんどの例では、出産後に改善されます。
(日本臨床衛生検査技師会・小栗孝志)
2009 年 12 月 16 日 by admin
赤ちゃんが少し大きくなる妊娠12週ごろになると、妊婦さんの血液からさまざまなことを調べていきます。
まず貧血の有無や血小板数。妊娠すると生理的に血液が薄くなります。重い貧血状態になると、おなかの赤ちゃんに酸素がいきわたらなくなってしまいます。血小板数も少なくなると、出血しやすくなります。
感染症検査も重要です。エイズにつながるHIV、梅毒などの性病や、C型肝炎ウイルス抗体、B型肝炎ウイルス抗原、成人T細胞白血病ウイルス抗体などについて調べます。万一、陽性だと赤ちゃんに感染する恐れがあり、対応が必要になります。
また、安全に出産を行うためには、妊娠中から出産時の出血に備えて血液を確保する必要があり、それに備えて血液型や不規則抗体(輸血時に通常と違う反応を引き起こす抗体)の有無を調べておきます。
たとえば、Rhマイナスの血液型のお母さんがRhプラスの赤ちゃんを妊娠した場合、免疫反応によって溶血性貧血や黄疸が引き起こされることがあります。次の出産に影響が出る場合もあります。血液型や不規則抗体を知ることは、妊娠のさまざまなトラブルを防ぐうえで重要です。
(日本臨床衛生検査技師会 小栗孝志)
2009 年 12 月 16 日 by admin
妊娠が判明したお母さんには、さまざまな検査が待っています。血液検査、尿検査、超音波検査などがあり、採血などは少しチクッとして痛いですが、そこからさまざまな情報を得ることができます。
妊娠初期の血液検査では、風疹抗体、トキソプラズマ抗体の有無などを調べます。もしお母さんが妊娠前半期に初めて風疹、トキソプラズマ症にかかると、赤ちゃんに重大な障害(風疹は心臓奇形・聴覚障害など、トキソプラズマ症は脳炎・水頭症など)を引き起こす恐れがあるからです。
尿検査では、尿中に蛋白、糖、ケトン体、血液などが混じっていないかを通院のたびに調べていきます。尿を試験紙につけて色の変化を読み取り、さらに尿を遠心器にかけて下に沈んだ成分(尿沈渣といいます)を顕微鏡で調べます。
一回きりのプラスは生理的な要因の場合もありますが、検査のたびに数回続けてプラスに出ると、蛋白は妊娠中毒症、糖は糖尿病あるいは妊娠糖尿病などの可能性があります。またケトン体は妊娠悪阻(重症つわり)、潜血は切迫流産のときにプラスとなることがあります。
次回は妊娠12週ごろの血液検査についてお話しします。
(日本臨床衛生検査技師会 小栗孝志)
2009 年 12 月 16 日 by admin
獣肉を生で食べるのも、寄生虫に感染する恐れがあります。
牛の肉、横隔膜などに寄生する「無鉤条虫」の幼虫は、大豆ほどの大きさですが、人の体内に入ると、小腸内で全長3~7メートルの成虫になります。腹部不快感、腹痛、下痢などの症状が出ることもあります。
豚の肉、横隔膜、肝臓などに寄生する「有鉤条虫」の幼虫も大豆大で、人の小腸内で2~5メートルにも成長します。この虫は、卵を通じて寄生することもあり、腸内でふ化した幼虫が全身に運ばれ、皮下、筋肉、脳、脊髄などに袋を作ると重篤な症状を起こします。
豚や羊の肉には「トキソプラズマ」という原虫の塊ができていることがあり、生肉や生ハムなどを通して体内に入ります。猫の便も感染原因となります。無症状のことが多いですが、妊婦の胎盤から胎児に移行すると、水頭症などを引き起こす先天性トキソプラズマ症を発症することが、まれにあります。
寄生虫検査には、便を調べるもの、肛門に特殊なテープを張って調べるもの、血液の免疫反応を調べるものなどがありますが、食生活の中で感染予防を心掛けるのが何より大切です。
(日本臨床衛生検査技師会 山本徳栄)
2009 年 12 月 8 日 by admin
今回は、淡水魚を生で食べることによって感染する寄生虫について紹介します。
まず、サクラマス、カラフトマスなどサケ属の魚の筋肉には「日本海裂頭条虫」の幼虫(体長1、2センチ)が寄生していることがあります。これを生で食べると、小腸内で成虫になり、全長が5~10メートルにも達します。症状は、下痢、腹痛、腹部膨満感などで、個人差があります。
アユ、ウグイ、シラウオなどの魚には、体長0.15ミリほどの「横川吸虫」の幼虫が寄生していることがあります。成虫でも1.5ミリと小型で、少数の寄生なら症状はありませんが、多数寄生すると腹痛、下痢などを起こします。
コイやフナなど寄生する「肝吸虫」の幼虫は、成虫の体長が1、2センチ程度。肝臓内の胆管に寄生するために、肝障害などを起こします。これらは検便で診断します。
ドジョウ、ライギョ、ヤマメ、アマゴなどに寄生するのは「顎口虫」の幼虫(約3ミリ)。人間の体内では、幼虫のままで皮膚や皮下組織を移動し、炎症を起こします。
これらの感染を予防するには、生や不完全な加熱で魚を食べないことが大切です。
(日本臨床衛生検査技師会 山本徳栄)
2009 年 12 月 8 日 by admin
寄生虫は私たちの身近に、たくさん存在しています。まずは、海産魚にひそむ寄生虫について紹介します。
サバ、スルメイカなど200種以上の魚には「アニサキス」の幼虫(体長2~3センチ)が寄生していることがあります。
刺し身と共にこの幼虫を摂取すると感染します。胃アニサキス症は、食後2~8時間程度で強い痛みを訴え、悪心、嘔吐を伴うことがあります。治療薬はないため、内視鏡で摘出します。
また、腸アニサキス症では腸閉塞、腸穿孔などと診断され、開腹手術を受けることがあります。感染を予防するには、氷点下20度以下で1日以上、冷凍します。
ホタルイカ、ハタハタ、タラなどの内臓には「旋尾線虫」の幼虫(体長4~8ミリ)が寄生していることがあります。とても細く肉眼で見つけることは困難です。幼虫が寄生したホタルイカなどを食べると、数時間から2日程度で激しい腹痛、嘔吐などを起こすことがあります。
1、2週間後に腹部の皮膚内に幼虫が現れると、強いかゆみを伴うミミズばれが起こります。それが不規則に移動することがあります。ホタルイカの内臓を生で食べる場合は、氷点下30度で4日間以上、冷凍することが大切です。
(日本臨床衛生検査技師会 山本徳栄)
2009 年 12 月 8 日 by admin
食事の欧米化などによって大腸がんが著しく増えています。がんの死亡原因のうち大腸がんの割合は、男性で4位、女性では1位となっています。2日分の便を採取して調べる便潜血検査の重要性もますます高まっています。
もし、検査の結果が「陽性」だったら、どうすればいいでしょうか。
実は、早期のがんや形が平らながんでは、便潜血検査が陽性になることはあまり多くありません。陽性となるのは痔によるものがもっとも多く、ポリープや進行がんの場合がこれに続きます。
統計的には、検査実施者の5~7%が陽性で、その約半数からポリープが発見され、2~4%ががんであるとされています。ですから、陽性になっても悲観的になる必要はありませんが、大腸内視鏡などの精密検査を速やかに受けることが重要です。
逆に、陰性だったとしても安心はできません。進行がんの中でも、出血しないタイプもありますし、たまたま検査の時は出血していなかったという場合も考えられるからです。
大腸がんは45歳以上になると発症率が高まります。陰性であっても毎年、検査を受けることが大切です。もちろん自覚症状がある場合は、精密検査を積極的に受けましょう。
(日本臨床衛生検査技師会 小野 静)
2009 年 12 月 3 日 by admin
住民検診や人間ドックなどで、多くの方が「便潜血検査」を体験されていることと思います。
大腸の内壁にがんがあると、しばしば出血が起きます。その量が多ければ、タール便になったり便器に鮮血が付いたりしますが、微量の出血の場合は見た目では分かりません。潜血検査では、血液のヘモグロビンが便の中に存在するかどうかを調べ、陽性反応があれば、医療機関で精密検査を受けることになります。
胃などの上部消化管に出血がある場合は、ヘモグロビンが消化液の影響を受けるために検出できにくいのですが、腸の場合は微量の出血でもキャッチできるため、大腸がんの早期発見に役立つわけです。
ただし、痔や大腸ポリープでも陽性になるので、陽性イコール大腸がんだと心配する必要はありません。逆に、採取方法が不適切だったりすると、大腸がんがあっても陰性になることがあるので、注意が必要です。
トイレで便を採取するのは気の進まない作業かもしれませんが、説明書に従って、正しく採取してください。2日間採取すると、早期がんの発見率は1日採取の3倍になります。症状がなくても、年に1度は受けるようにしましょう。
(日本臨床衛生検査技師会 冨永博夫)
2009 年 12 月 3 日 by admin
今回は心電図を利用した検査を紹介します。
一般的な「12誘導心電図」は健診などでは10数秒、病院でも長くて数分しか記録しませんので、発作的な異常を見つけられるのはまれです。
長時間の観察には、入院中の患者さんであれば「心電図モニター」で対応し、外来の患者さんには「ホルター心電図」という装置を付けていただきます。24時間の心電図を記録できる装置で、10年ほど前までは、カセットテープに記録していましたが、今はメモリーカード、マイクロディスクなど記憶媒体の軽量化に伴い、小型になっています。
運動により、心筋梗塞などの発作を誘発する「負荷心電図」という検査もあります。患者さんの急な変化に対する薬や装置を備えた場所で、運動負荷をかけます。
手術後に寝たままの状態から数分座ってみるといった軽いものから、しばらく立っておく、距離や時間を決めて歩く、階段の上り下りをする、ペダルをこぐなど、さまざまです。前後や途中の心電図を比較することで、病気の有無や治療経過を判断します。
心電図以外に呼吸の状態を観察する装置を使う「心肺負荷試験」を導入する施設が増えています。
(日本臨床衛生検査技師会 百田浩志)
2009 年 12 月 3 日 by admin
心臓は4つの部屋に分かれており、上2つを右房・左房、下2つを右室・左室と呼びます。 心臓を動かす電気信号は、右房上部にある洞結節から発せられ、4方向に分かれて左右心房を伝わり、洞房結節という場所に収束した後、左右心室の2方向に伝わります。
心電図の波形は、心房の興奮→心室の興奮→心室が元に戻ろうとする―で1グループとなっています。心臓の音を「ドクン・ドクン」と表すならばこのグループが1拍の「ドクン」です。
電気の流れが妨げられている状態や、通常の流れと違う状態になると、波形に異常が現れます。隣のグループとの間隔が近いと頻脈、遠いと徐脈ということになります。また、リズムが一定でなかったり違う形の波形が混入していると、不整脈と呼びます。
狭心症や心筋梗塞の場合、心臓に栄養を運ぶ血管(冠状動脈)が狭くなったり、詰まってしまうことによって、心臓の筋肉に酸素が送られず、本来の電気の流れや心筋の収縮が変化するので、心電図で特徴のある波形が現れます。ほかにも、それぞれの波形によって多くの病気が分かります。
(日本臨床衛生検査技師会 百田浩志)
2009 年 12 月 3 日 by admin