病気を治す「治療医学」に対し、病気にならないようにするのが「予防医学」です。ここでも検査データが主役になります。
食生活の改善、適度な運動、ストレス解消などの健康増進と予防接種、生活習慣病対策などの疾病予防を一次予防といい、疾病の早期発見、早期措置により重症化を防ぐものを二次予防といいます。先週お話した健診は一次予防、検診は二次予防ということです。
40歳から74歳を対象として今年から始まった特定健診・保健指導(いわゆるメタボ健診)も一次予防です。しかし、対象年齢を考えると、健康を証明するというより疾病の早期発見という二次予防に近いものになりそうです。これだと、検査結果が悪ければ検査嫌いになるかもしれません。
たとえば成人の記念に、というように若いときから自分の健康なデータを管理し、少しでもデータが悪くなったら医療機関で受診すれば健康寿命が伸びるはずです。
健康検査はいつでもどこでもできなければなりません。医療機関、薬局をはじめ、駅ナカ、スーパー、コンビニなどで精度の高い市販検査薬を用いて自分の健康を守る。そんな時代がやってきました。
2008 年 11 月 21 日 by admin
医療機関での診断や治療に臨床検査データが必要不可欠なのは言うまでもありませんが、健診や検診においても臨床検査は重要です。
ところで「健診」と「検診」の違いをご存知でしょうか? 読み方は同じですが、健診は健康診断・健康診査のことを意味し、健康であるかどうかを調べるものです。それに対し、検診は特定の疾患を早期に発見し、早期に治療することを目的とした検査診断・検査診察を指します。
少し古いデータですが、2002年度の群馬県での基本健診とがん検診の受診率に興味深い事実があります。
この年の基本健診の受診率は63.4%だったのですが、これに対しがん検診は、胃がんが17.5%、大腸がん19.9%、子宮がん20.1%、乳がん21.8%、最も多い肺がんでも31.1%にとどまりました。このことから、健康診断は気軽に受けるが、たとえ早期でも「がん」が見つかることは尻込みする受診者の行動が垣間見えます。
もちろん、このような理由だけが受診率に影響を及ぼしている訳ではなく、受診意識の醸成や機会の確保も大切です。ことし四月から実施が義務付けられた特定健診・保健指導の成否も、今後の受診率を左右しそうです。
2008 年 11 月 14 日 by admin
「EBM」という言葉をご存じでしょうか。エビデンス・ベイスド・メディシン(根拠に基づいた医療)の略語です。
これまで医師の診断や治療は、ともすれば個々の経験に左右されたり、権威者の意見に影響されたりする面がありました。それが個々の患者の利益にならなかったり、不必要な治療を招く場合もあったのです。
EBMとは、患者さんのケアを決める際に、できる限り実証されて実用できる根拠を用い、良心的に慎重に考え、質の高い、患者中心の医療を実践していくという概念です。
経験に基づく医学と、外部の根拠に基づく科学が融合したとき初めて、最良の医療が提供できるとされています。少し哲学的ですが「アートとサイエンスの融合」と呼ばれることもあります。
肝機能、腎機能、脂質・貧血、血糖など検体検査(人の体から得られた血液、尿などを使う検査)のデータは、その大半が客観的な数値で表現されます。そして、長年にわたる臨床検査技師の努力によって検査の正確さ、精密さも飛躍的に向上しました。つまり臨床検査データこそがきわめて有用なエビデンスといえるのです。
この連載では、患者さんに身近でありながら意外と知られていない検査の世界について、知識を深めていただければと思います。
2008 年 11 月 7 日 by admin