検査のはなし

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 脳波とは、脳の電気的活動を記録するもので「マイクロボルト」「ヘルツ」といった単位が使われます。マイクロボルトとは、波の振幅を示すもの。ヘルツは特定の周期の波が1秒間に現れる回数(周波数)のことです。これらを判読することによって、患者さんの脳の機能が客観的にわかります。

 

 

 はっきりと目が覚めた状態のときは、周波数の大きいベータ波(14~30ヘルツ)、目を閉じてリラックスしているときはゆったりしたアルファ波(8~13ヘルツ)、軽い眠りのときは、シータ波(4~7ヘルツ)、深い眠りのデルタ波(1~3ヘルツ)と、特徴的なパターンを示すので、波形から眠りの深さを知ることもできます

 

 

 脳波検査は、脳死判定にも使われます。「脳死は人の死」と定義し、家族の同意で子どもの臓器提供を可能にした改正臓器移植法が昨年7月、成立しました。

 

 

 脳死の判定基準には深い昏睡自発呼吸の喪失瞳孔の固定脳幹反射の消失平たん脳波の5つの確認事項があります。30分以上、脳波が平たんなままで、他の項目を満たした場合に、6時間の経過をみて変化がないことを確認し「脳死」と判定します。

 

(日本臨床衛生検査技師会 谷口薫)


2010 年 2 月 25 日 by admin

 

 私たちは、お米や肉や魚などを食べ、それを体内でブドウ糖やアミノ酸に変えて命を支えています。この機能を「代謝」と言います。

 

 

 しかし、まれに先天性の代謝異常をかかえて生まれてくる赤ちゃんがいます。見かけは元気でも、放っておくと健康を害したり、知的障害につながる場合もあります。このため、日本では1977年から先天性代謝異常症などを早期発見・治療するための「新生児マス・スクリーニング」を実施しています。

 

 

 この検査は、生後4~6日の赤ちゃんを対象に行います。かかとから少量の血液を濾紙で採取し、検査機関に送って調べます。

 

 アミノ酸代謝疾患フェニールケトン尿症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症糖質の代謝異常であるガラクトース血症、内分泌疾患では、先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症について調べます。

 

 

 これらの検査は、保護者の方の希望により実施します。母子健康手帳別冊にある「先天性代謝異常検査依頼書」に必要事項を記入して、医療機関に提出してください。費用は行政が負担しますが、採血料は自己負担の場合が多く、おおむね3千~4千円程度です。

 

(日本臨床衛生検査技師会 町田幸雄)


2010 年 2 月 25 日 by admin

 

 

 手のしびれは、さまざな病気に現れる症状で、原因としては神経の圧迫脊髄の障害糖尿病などがあります。時に、脳の疾患が手のしびれにつながる場合もあり、原因を追及することはとても大切です。今回は、中高年の女性に多くみられる「手根管症候群」についてお話します。

 

 

 

 手根管とは正中神経が入っているトンネルで、手首の中央を走っています。それが何らかの原因により手首の部分で圧迫されると、親指から薬指にかけてのしびれを感じます。仕事などで手首の使いすぎた場合のほか、糖尿病、肥満、痛風、甲状腺機能低下症、リウマチなどが原因となることもあります。ひどくなると、親指の付け根のふくらみがやせてきて、物をつまみにくくなります。

 

 

 

 この病気は、筋電図検査ですぐ診断できます。筋電図検査は、手首に電気的な刺激を与えて、筋線維が興奮する際に発生する活動電位を記録するもので、その速度が遅ければ、手根管症候群です。この検査により、全体的なしびれ感だけではなく、それぞれの指にしびれを与える神経根の障害や知覚異常なども診断できます。しっかりと検査することが大切です

 

 

(日本臨床衛生検査技師会 町田幸雄)

 


2010 年 2 月 25 日 by admin

 

 

 ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)という名前を聞いたことがありますか。

 

 

 

 HPVには100種類以上の型があるとされ、このうち6型、11型などは尖圭コンジローマを引き起こすことで知られています。尖圭コンジローマとは、陰部などにいぼのようなものができる性感染症で、治療法は、薬物のほか外科手術があります。

 

 近年、HPVの中に、子宮頸がんを引き起こす型があることが分かってきました。これらはハイリスク型のHPVと呼ばれ、特に16型、18型が20代、30代の患者さんから多く検出されます。

 

 

 ハイリスクのHPVに感染したからといって、すべてががんになるわけではなく、多くの場合は一過性の感染でウルスは体外へ排除されます。まれに、感染が長期にわたって続くと、そのごく一部が「前がん病変」の状態になります。約10年続くので、この状態で発見できれば、治療成績はとても良好です。細胞診でこの状態を検出することができるので、ぜひ子宮がん検診を受けてください。

 

 

 子宮頸がん予防のために、HPVに対するワクチンも実用化され始めており、今後の予防効果に期待したいところです。

 

(日本臨床衛生検査技師会・坂本徳隆)

 


2010 年 2 月 25 日 by admin

 

 淋病(淋菌感染症)は、昔からよく聞く性感染症です。男性に多く、尿道の強い痛み、膿など、はっきりした症状が現れるため、発見・治療しやすいタイプの性感染症ですが、まだまだ減っておらず、むしろ若い人たちを中心に増加傾向あります。最近は淋病で受診した患者さんからエイズウィルスが見つかることもあります

 

 

 淋病の診断には、尿道や膣の分泌物を調べ、淋菌の存在を確かめます。この菌はとても弱く、感染している粘膜から離れると数時間で感染性を失うといわれています。菌の核酸(DNA)を調べる方法なら、男性の場合は尿検査だけで済み、菌が死んだ状態でも確認できます。合併しやすい性器クラミジア感染症を検査するのにも有効です。

 

 

 しかし、この方法では薬剤感受性試験ができません。最近は、抗生物質に耐性を持つ菌もいるため、菌を培養し、どのタイプの薬剤が菌の成育を阻害するかを試してみるのが薬剤感受性試験です。淋菌は温度差や乾燥に弱いため、私たち臨床検査技師は注意深く処理する必要があります。

 

 

 このように状況に応じた検査方法があります。気になったときは、どうぞ受診してみてください。

 

(日本臨床衛生検査技師会 坂本徳隆)


2010 年 2 月 25 日 by admin

 

 「STD」という言葉をご存じでしょうか。性行為を通じて感染する病気の総称です。発症に至っていない場合もあるため「STI」(性行為を通じての感染)と呼ばれることもあります。

 日本性感染症学会梅毒、淋病、性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、エイズ、カンジダなど17種類を挙げています。

 STDに共通する対策は、予防、早期発見、早期治療ということになります。早期発見のためには検査が大切です。性感染症の検査というと、怖いイメージを持つ方もいるでしょうが、血液検査、膣分泌物検査、尿検査の3種類が基本です。症状によっては、患部の分泌物を採取して調べる場合もあります。多くの場合は、保険で受けられます。

 陰部の痛み、かゆみなど自覚症状があれば、検査を受けるようにしてください。また、自覚症状が現れにくい性感染症もいくつかあり、最も怖いのはHIV・エイズですが、行政の無料・匿名検査があるので、費用面の心配は要りません

 患者さんのプライバシーを守りつつ、性感染症への差別や偏見をなくしていくことが、早期の受診につながっていきます。

(日本臨床衛生検査技師会 坂本徳隆)


2010 年 2 月 22 日 by admin

 

  世界エイズデー(12月1日)に合わせて、各地で啓発行事が行われています。臨床検査技師も、啓発行事での迅速検査に協力しています。わずか5ミリリットルの採血で検査が可能です。

 エイズとは「後天性免疫不全症候群」の略で、免疫の働きが弱っていき、さまざまな感染症やがんなどを発症して死に至る病気。その原因となるウイルスがHIVです。昨年、国内では、外国籍の人も含め1日平均4人以上のHIV感染またはエイズ発症が報告されています。他の先進国とは異なり、まだ増加傾向です。

 性行為を通じて感染することもあって、おぞましい病気というイメージが広まり、怖がる人も多いですが、治療の進歩により、HIV感染者のエイズの発症をかなり食い止められるようになってきました。検査で早期発見すれば、薬を飲みながら健康人と変わらぬ社会生活を送ることができます。しかし、検査の段階で既に発症していた「いきなりエイズ」のケースも増えています。

 不安を抱えながら、検査に行かないでいると、配偶者や恋人にも感染してしまう恐れがあります。各地の保健所などで実施している無料・匿名のHIV検査をぜひ活用してください。

(日本臨床衛生検査技師会 坂本徳隆)


2010 年 2 月 22 日 by admin

   血液型の抗原は400種類ほどあり、輸血の際に、すべての型が合う血液を用意することは困難です。このため、ABO式の血液型とRhのプラスマイナスについて合わせます。

 これらの抗原が合わないと、血球の破壊などの重篤な副作用につながる可能性があるからです。それ以外の抗原の型は合っていないので、輸血によって抗体を産生することがあります。これを「不規則抗体」と言います。妊婦さんが出産する際に不規則抗体ができる場合もあります。

   先週紹介したようなA型の人が持つ抗B抗体、B型の人が持つ抗A抗体などは、生まれつきある「自然抗体」。これに対し、後天的にできるのが不規則抗体です

   輸血する前に、事前にABO型、Rh式の検査とともに、不規則抗体の有無を調べる検査をします。そして不規則抗体が見つかれば、その患者さんの血液とドナーの血液を反応させる交差適合試験を行います。

 試験で血球同士が凝集を起こさなかった場合、輸血OKとなるわけです。 最近では、コンピュータ上での交差適合試験(コンピューター・クロスマッチ)も普及し、検査の迅速化に役立っています。

(日本臨床衛生検査技師会・小栗孝志)


2010 年 2 月 22 日 by admin

一口に血液型と言っても血液型を決定する抗原は400種類あまりあります。

 その中でも皆さんにもなじみが深いのは、ABO式血液型A型、B型、O型、AB型があり日本人の比率は4対2対3対1です。

   A型はA抗原、B型はB抗原、AB型はA抗原とB抗原を持ちO型はどちらも持たない0(ゼロ)からO型になったと言われています。

 A型の血清の中には「B抗体」があり、もしもB型の血液を輸血すると、赤血球を壊してしまう重篤な副作用が起こることがあります。同様に、B型の人はA抗体、O型の人はAとB抗体を持ち、AB型の人は抗体を持ちません。

 血液型は抗原(赤血球)と抗体(血清)の両方から調べます。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんの血液型は確定とはいえません。生後間もない赤ちゃんは母体の抗体が移行していたり、血球を固める成分が少ないため、検査が不正確になる場合があるのです。

 抗体は生後6カ月~1歳ほどで、検査できるレベルまで上昇します。子どもの血液型を知るには、1歳をすぎてから、採血を伴う検査の折に調べてもらうことをお勧めします。

(日本臨床衛生検査技師会・小栗孝志)


2010 年 2 月 22 日 by admin


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