検査のはなし

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人間の体には、ウイルスなどの異物を排除する機能があります。これが「免疫」と呼ばれるものですが、免疫機能が自分自身の正常な細胞、組織を「異物」と誤解して攻撃を始めると大変です。これによって起こる病気を「自己免疫疾患」と呼びます。  

 

 関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど全身の組織に対し反応する型と、バセドウ病、自己免疫性肝炎のように特定の臓器、組織に対して反応する型の2種類があり、どちらも「抗体」と呼ばれるタンパク質で構成された成分が体内で作られて、自己組織や細胞などを攻撃します。

 

  

 臨床検査で、それぞれの疾患ごとに抗体を測定することが可能になり、病気の診断に貢献しています。たとえば、慢性関節リウマチではリウマチ因子という自己抗体が高率に検出され、全身性エリテマトーデスでは二本鎖DNAに対する抗体が検出され、診断の強い根拠になります。

 

 

  しかし、自己抗体が100%の確率で血液中に存在するとは限りませんし、その症状や病期によっても検出頻度が違います。また陽性になったからその疾患であることが確定するわけではありません。専門医の臨床所見、症状など総合的な判断を仰ぐ事が大切です

 


2009 年 3 月 28 日 by admin

 

厚生労働省の国民健康・栄養調査(2006年度)によれば「糖尿病が強く疑われる人は820万人、可能性が否定できない人は1050万人。人口の15%にあたる1870万人が糖尿病またはその手前の状態で、「国民病」というべき事態になっています。

 

 

 糖尿病とは、血液中の血糖値が通常より高い状態を指します。肥満などで内臓脂肪が増えると、血糖値を調節するインスリンの濃度が高くなり、その濃度を下げるために血液の量が増え、血圧が上がるという悪循環を起こし、さまざまな合併症につながります。

 

 

 病状が進行しなければ自覚症状が出にくく、患者本人が軽く考えやすいことが問題で、早期発見・治療のために臨床検査が重要になります。

 

 

 よく使われるのは血糖値と「HbA1c」の検査です。血糖値は採血時の糖分の状態を表します。HbA1cとは、赤血球のタンパクであるヘモグロビン(Hb)ブドウ糖が結合したものの一部で、過去1~2カ月の血糖の総合的な高さを反映するといわれます

 

 

 糖尿病の予備軍は、40代以降急激に増加します。この年代以上の人は、健康診断などを毎年必ず受け、糖尿病の疑いがあれば早めに対処することが大切です。


2009 年 3 月 28 日 by admin

 

 お酒の強い人、弱い人がいます。これは、肝臓内のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きの差によるものです。

 

 体内に入ったアルコールは、代謝により毒性のあるアセトアルデヒドになり、顔が赤くなったり、頭痛や吐き気が起きたりします。これを無害な酢酸に変えるのがALDHですが、働きが弱かったり、まったく機能しないタイプが日本人を含むモンゴロイドでは、約半数に及ぶといわれています。このため、お酒が飲めない人は、いくら頑張っても飲めるようにはなりません。

 

 「酒は百薬の長」とも言われますが、これは1日にビール1本以内、日本酒なら1合以内の場合です。毎日のように、大量の飲酒を続けたら、肝臓は疲れてしまい、脂肪の代謝がスムーズに進まなくなってしまいます。この結果、肝臓の細胞に脂肪が貯まってフォアグラのような脂肪肝になってしまいます。細胞が膨らみ、肝臓の中の血管を圧迫して、血流が悪くなり、肝臓の働きが低下してきますし、肝硬変になってしまう場合もあります。

 

 血液検査でおなじみのγーGTPは、タンパク分解酵素で、アルコール摂取により肝臓に異常が出た場合に、著しく上昇します。数値を軽視せず、生活習慣の改善に努めてください。

 

 

 


2009 年 3 月 18 日 by admin

 

 肝臓は「沈黙の臓器」といわれます。疲れやすさを感じたり、黄疸などが出現したときには、かなり病状が進行していることがあるからです。

 このため、1年に1回程度は健康診断を受けることが必要です。肝臓の病気の約70%は、検診で発見されています。

 

 血液検査の項目でよく見かけるGOT(AST)GPT(ALT)などは、肝細胞の中にある酵素です。肝細胞が壊れると血液中に漏れ出てくるため、そろって値が高くなります。胆管が詰まったときはALγ-GTP、ビリルビンなどが高くなりますし、飲酒による脂肪肝ではγーGTPが大きく異常値を示します。

 

 肝臓の役割はとても多岐にわたり、「化学工場」にもたとえられます。たとえば「代謝」。糖質は小腸で吸収されて肝臓に運ばれ、グリコーゲンとして肝臓に、余った糖分は脂肪としておなかに蓄えられます。空腹になると、グリコーゲンを分解してエネルギーにして、それでも足りない時には、おなかの脂肪を動員して中性脂肪に変えます。アルコールなどの解毒、不要物の排せつ、血液循環量の調節などをつかさどるのも肝臓です。

 命を守る化学工場の安全性のチェックを心掛けてください。


2009 年 3 月 18 日 by admin

 

 メタボリックシンドロームは、世界保健機関(WHO)が1999年に提唱、日本でも2005年に診断基準が作られました。ウエストの計測という簡単な行為で診断できることもあって、大きな関心を呼びました。

 

 食生活の欧米化や運動不足などの中、腹部肥満(内臓脂肪)が、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常をもたらし、動脈硬化につながることが大きな問題になってきました。そして、早期発見し、生活習慣の改善に努める取り組みが生まれたのです。

 

 20084月からは、4074歳を対象にした特定健診・特定保健指導が保険者に義務付けられました。メタボリックシンドロームに特化した健診であり、早い段階で糖尿病や心血管病の予防をするために、特定保健指導の必要な受診者を抽出することを目指しています。

 

 検査項目は、ウエスト周囲径、血圧、血液検査(中性脂肪など8項目)、糖尿病検査、肝機能検査です。その健診結果と質問により、生活習慣病のリスクのレベルを定め、生活習慣の改善につながるような動機づけをしていくのが、特定保健指導です。

 

正しい指導と評価をしていくために、検査値の統一化や標準化がとても重要です。

 


2009 年 3 月 16 日 by admin

 

 花粉症をはじめ、私たちが暮らしている環境にはさまざまなアレルギーを引き起こすアレルゲンの存在が知られています。ハウスダスト、食べ物、化粧品、指輪などの装飾品、医薬品にいたるまで身近なものばかりです。

 

 その中で軽視できないのが、金属アレルギーです。歯科治療に使われる、歯の欠損を補う金属、入れ歯、矯正に使う金属ワイヤ、チタンを使ったインプラント治療によっても金属アレルギーが起こる可能性があります。

 

 これらの金属が唾液に触れ、イオン化すると上皮粘膜下組織の線維性組織と結合し、生体には存在しない異種タンパクになり、免疫機能が作動すると考えられています。

 

 金属アレルギー検査には、パッチテストという方法を使います。たとえば金、銀、パラジウム、ニッケルなど1種類ごと溶かした溶液またはワセリンに溶かしたものを小さな丸いばんそうこうにしみ込ませ、被験者の背中に張り付けます。2日後に取り外してその皮膚の反応を「反応なし」「弱い紅班」「紅班と浸潤」というふうに判定します。歯科治療の場合は陽性になった金属を含む修復物を取り外し、症状の経過を観察し、アレルギーを起こさない金属で再治療する必要があります。

 


2009 年 3 月 16 日 by admin


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