血液には、いろいろなタンパク質や無機ミネラルなどを含む血漿と呼ばれる液体成分と、傷口の修復に役立つ血小板、細菌やウィルスなどをやっつける白血球、酸素を運ぶ赤血球などが含まれています。血液が赤く見えるのは、赤血球が一番多く含まれるためです。
赤血球のタンパク質の95%はヘモグロビン(血色素)と呼ばれ、酸素を運ぶ役割を担います。赤血球は骨髄で1日に1億個作られ、血管内で働き出してからおよそ4カ月で寿命が尽きます。
赤血球の病気は、血管内で 循環している赤血球量が多いか少ないかに大別されます。健康診断などで「血算」という項目がありますが、これは血液中の細胞である赤血球、白血球、血小板の数のほかに、赤血球中のヘモグロビン量と赤血球の容積を同時に計測し赤血球1個あたりの数値(赤血球指数)を計算しています。
血管内で循環している量は細胞数から見えてきますが、赤血球の質の問題は赤血球指数から見えてきます。赤血球指数は、赤血球の平均的な大きさや、1個あたりのヘモグロビン含有量、濃度を示す指標です。赤血球の質が悪いと寿命が短くなり、量が少なくなって貧血につながる場合もあります。
2009 年 5 月 31 日 by admin
貧血とは、血液中の赤血球や、酸素を運搬するヘモグロビンが減少した状態です。貧血になると十分に酸素を送り込むことができず、さまざまな症状が現れます。
顔色が悪い、動悸や息切れがするなどの自覚症状がある場合と、徐々に進行し自分では気がつかず、検査で初めて発見される場合とがあります。
血球検査(赤血球数とヘモグロビン量、ヘマトクリット値)、やその測定を基に計算した赤血球指数、網状赤血球、血液像などの血液検査をすることで、ある程度は診断がつきます。しかし貧血の種類や原因はさまざまです。
たとえば、食事の偏りが原因で鉄分が不足する。胃が萎縮して赤血球を作る成分(ビタミンB12、葉酸)の吸収がされない。ある種の薬剤や自己抗体により、赤血球が寿命(120日)より早く壊れるなど。
種類と原因を探るために、赤血球の生産を促す糖タンパクホルモンの量を調べたり、胃カメラ、便潜血などの検査をしていきます。中には、白血病、再生不良性貧血などの重大な病気が隠れている場合もあり、血液を作る骨髄に針を刺して調べることもあります。
2009 年 5 月 31 日 by admin
血液検査で、血糖が異常値だった。中性脂肪が高かった。こんな時、すぐにでも病気になってしまうのではと過剰に心配する方もいれば、まったく楽観する方もいます。血液検査を上手に利用するためには、どんな心構えが必要でしょうか。
検査結果を判定する尺度の一つに「基準範囲」があります。基準値や正常値とも呼ばれます。これは健常な人の大部分、一般に95%が入る検査値の範囲です。逆に言えば、健常者でも20人に1人は基準範囲から外れることになります。
特定健診(メタボ健診)の判定値も、健常者と異常者を明確に分けるものではなく、両者が判定値の両側に重なり合って分布します。血中成分の値には個人差があり、判定値から少し外れたとしても、過剰に心配する必要はありません。ただ、再検査や精密検査を指示されたら、面倒がらずにきちんと受けることが大切です。
また、受診時の注意事項を守ることも大切です。たとえば、血糖や中性脂肪は、食事によって血中の値が高くなります。検査値の変動を避けるため、受診前の食事や運動を控えるなどの注意が必要です。
同じ条件で定期的に検査を受けることによって、体の異常などの情報をいち早くキャッチできるのです。
2009 年 5 月 31 日 by admin
尿検査には、尿そのものの概観を見る場合と、尿中に溶解している成分、含まれる有形成分を分析する場合があります。
健康な人の尿は、透明な淡黄色か麦わら色です。しかし、食事や服薬の後、スポーツをして汗をたくさんかいた後などは、色や量も変化します。
溶解している成分の検査で最も多く使用されているのが試験紙です。酸性かアルカリ性かを示すpH、比重、たんぱく、糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、潜血、亜硝酸塩などが、試験紙を浸すだけで簡単に測定できます。
尿は全身を巡ってきた血液からの情報をたくさん含んでいるので、スクリーニング(選別)検査として使用されています。
早朝の尿は濃厚になるなど、採取する時間帯によって測定値が大きくばらつくため、検査によっては1日の尿をすべて集めたもの(24時間畜尿)を用います。
尿の中には、肉眼では見えない小さな有形成分がたくさん出ており、顕微鏡で観察することによって、その種類(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、塩類など)や量のほか、腎臓、膀胱、尿路系や他の全身的疾患のスクリーニング、治療効果の判定になどに利用されます。
2009 年 5 月 30 日 by admin
尿検査を受けたことがある方は多いでしょう。患者さんが痛い思いをせず、1回で十分な量を採取できるのが尿検査の利点です。この検査で何が分かるのか。まずは、歴史を振り返ってみましょう。
尿検査は、早くから病気の診断に利用され、紀元前400年ごろには、ギリシャの医師ヒポクラテスは、尿を肉眼で観察し、病気と関連付けていました。
11世紀ごろに活躍したペルシャの医師イスマル・ジュリアニは、色、濃さ、量、透明度、沈殿物、香り、泡の7種類の尿検査所見を記載し、検査機器を使用しない尿検査の基礎を確立しました。
19世紀には腎臓病学の父と言われたリチャード・ブライトが、尿中タンパク質の加熱凝固の性質を利用し、尿の定量化学分析の基礎を築きました。
尿は、全身をめぐる血液が腎臓でろ過されて作られます。1日に約1000リットルの血液が腎臓に流れ、このうち1~1.5リットルが尿管に流れて、膀胱にたまり、尿道を経て体外に排出されます。このため、尿は体の情報をたくさん含んでいます。体のどこかに異常があると、排出されるべきでないものが排出されることがあります。
腎臓や膀胱の異常だけでなく、肝臓の病気や糖尿病、がんなどを発見する手掛かりにもなるのです。
2009 年 5 月 30 日 by admin
ピロリ菌の感染の有無を調べる検査には、内視鏡を使わないものもあります。
副作用のほとんどない検査薬を使う「尿素呼気試験」は服用前と後の呼気を測定するものです。胃の中にピロリ菌がいる場合は、検査薬の尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解されます。この検査薬で使われる二酸化炭素は自然界にわずかしか存在しないため、高い精度で簡便に、菌の有無を確かめることができます。
このほか「血液・尿抗体検査」は、ピロリ菌に感染すると血液中にできる抗体を調べるもの。便を採取して菌の抗原の有無を調べる「便中抗原検査」もあります。これらの検査で菌が見つかれば、除菌の治療が始まります。
除菌には、2種類の抗生物質と1種類の胃酸抑制剤が用いられ、胃か十二指腸の潰瘍を合併した例にのみ保険が適用されます。
今年1月、日本ヘリコバクター学会は新たなガイドラインをまとめ、胃にピロリ菌がいる場合、「ピロリ菌感染症」であると定義。ピロリ菌を取り除くことが胃がん予防に役立つとして、除菌治療を勧めています。
胃の健康に関心を持つとともに、検査にさまざまな種類があることも覚えておいてください。
2009 年 5 月 29 日 by admin
胃の粘膜に生息する細菌「ヘリコバクターピロリ」は、1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルによって発見され、その後の研究で胃や十二指腸の潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんなどの発生に深くかかわっていることが明らかになりました。
鞭毛を使って活発に動き、胃粘膜にいろいろな障害を与えます。 経口感染すると考えられていて、衛生環境がよくない発展途上国だと感染率が高くなります。日本では、良好な衛生環境の中で育った若年者の感染率は低く、高齢者は高くなっています。
ピロリ菌感染を調べる方法は、内視鏡(胃カメラ)で組織の一部を切り取り調べる検査と、内視鏡を使わない検査があります。
内視鏡を使う検査には①採取した組織を染色して顕微鏡で観察する「鏡検法」②組織を培養してピロリ菌が増えるかどうか調べる「培養法」③採取した組織を検査試薬内に入れ、検査薬の色の変化を確認する「迅速ウレアーゼ試験」|の3種類があります。このうち迅速ウレアーゼ試験は、通常20分ほどで判定できるうえ、従来の検査と匹敵する正確さが長所です。次回は、内視鏡を使わない検査について説明します。
2009 年 5 月 29 日 by admin