検査のはなし

 MRI(磁気共鳴画像装置による検査は、超音波検査と並んで、放射線を使用せずに体の隅々まで撮影できる検査です。多くの医療機関で使われています。

 MRIは大きな円筒の中に体を入れて撮影します。この円筒の中は、強い磁気があり、人体に外から電磁波が加わります。それによって、体内の水素原子がエネルギーを蓄えます(これを磁気共鳴現象と呼びます)。

 そして、電磁波を止めると、水素原子のエネルギーが放出されるので、それをコンピューターで解析し、画像に置き換えます。

 この原理を用いる事により体内の水分(水素原子)を含有しているほとんど臓器、骨、軟骨を画像化できます。組織によって水分量が違うため、コンピューターが画像としてコントラストを付け描き出せます。脳、筋肉、脂肪、関節内など軟部組織も鮮明に映し出すことができます。

 身体をあらゆる方向にスライスした画像が得られ、多くの撮影方法の中から疾患にあったものを選べることも大きな特徴です。造影剤を使用せずに血流を見ることができ、初期の脳梗塞の診断や、骨、筋肉、臓器の動きまで、身体のあらゆる部位が検査の対象となっています。

(日本臨床衛生検査技師会 土居修)


2009 年 10 月 14 日 by admin

 

 脳や心臓や筋肉には「生体電位」というものがあります。心臓の電気的活動を記録したものが心電図で、脳の活動を記録したものが脳波です。

 脳波は、脳から発生している数十マイクロボルトという微小な電位を、頭皮上につけた電極でキャッチし、百万倍くらいに増幅した波形です。検査には、頭部に21個の丸い皿電極をつけて、ベッドに休み、目をつむって安静の状態で脳波を記録します。

 眠っているとき、深呼吸をするとき、閉じている目の前でストロボの光を点滅させたときなどの、軽度にしか出ない異常波を見つける検査もあります。

  脳波は脳の発達の程度に応じて変化します。乳幼児から小児期では年齢による大きな差異があり、成人になると変化が少なくなります。成長や老化、認知症、薬物の脳への影響、脳血管障害、がん、てんかんなどの補助診断や、脳死判定などにも使われています。

  歴史を振り返ってみますと、大脳皮質表面に電位活動があることは、19世紀末には発見されていましたが、実際に人の頭皮に電極をつけて脳波を記録したのは1924年のことです。 

 日本では、1936年に東北大学生理学教室が脳波の記録に最初に成功しています。

(日本臨床衛生検査技師会 谷口薫)


2009 年 9 月 24 日 by admin

 

 人間の味覚には、甘味、塩味、酸味、苦味と日本で発見された「うま味」の五つがあります。味を感じるのは舌や口蓋などにある味蕾(味細胞)が味物質をとらえ脳神経に伝達するシステムです。

 しかし、高齢化やライフスタイルの変化の中で味覚障害の患者さんも増えています。亜鉛の欠乏や全身疾患、心因性のもの、薬の多用など、原因はさまざまです。

 検査は、ろ紙ディスク法電気味覚検査法の二つがあります。ろ紙ディスク法では、精製白糖(甘味)、塩化ナトリウム(塩味)酒石酸(酸味)、塩酸キニーネ(苦味)を使い、これらの液を直径五ミリのろ紙に染み込ませ、味覚に関係する神経の感度を調べていきます。液の濃度を変えることで、どの味質に反応が悪いかが定量的に分かります。

 電気味覚検査法は、電気味覚計を使い、それぞれの神経領域に弱い電流を流し、刺激のレベルを変化させ、味が感じ取れるかを調べます。この検査では、味質ごとの違いまでは分かりません。

 口の中がいつも苦く感じる。味を薄く感じるなどの自覚症状があったら、医療機関で検査を受けることをお勧めします。

(日本臨床衛生検査技師会 才藤純一


2009 年 9 月 24 日 by admin

 

 めまいの原因を調べるために、めまいを誘発させる検査もあります。

   視運動性眼振検査」は、電車の窓から外を見るような感覚で、目の前を次々に通過する縦のしま模様を見つめてもらい、目の揺れの大きさや回数、速度を調べます。自分が回っているような錯覚を覚える検査です。しま模様を追い掛ける際のゆっくりした動き、目が元の位置に戻る際の速い動きを調べ、その左右差などを確認します。脳幹障害、小脳障害、中枢障害などがある場合は、目の動きの間隔や速度に異常が現れます。

  耳の中に冷水や冷たい空気を入れて内耳を刺激するカロリックテスト(温度刺激検査)という検査もあります。外耳道が冷えて三半規管の機能が低下すると、三半規管が正常な場合にはめまいが起こります。めまいの程度が小さいか、まったくない場合は、機能に異常があるわけです。

 一口にめまいといっても、その症状や原因はさまざまです。脳からのめまいが疑われる場合は、コンピューター断層撮影(CT)磁気共鳴画像装置(MRI)を使うこともあります。突然やって来るめまいには、早期治療が有効なことが多いので、不安を感じたら早めに受診し検査することをお勧めします。

(日本臨床検査衛生技師会 町田幸雄)


2009 年 9 月 24 日 by admin

 

   先週に続き、めまいの原因を確かめる検査について紹介します。

   重心動揺検査」は計器の上に足をそろえて立ってもらい、目を開けて1分間、目を閉じて1分間、重心の動きを電気的に記録します。そのパターンによって耳の鳴りの異常から起こる末梢性めまいか、脳、脳神経から起こる中枢性めまいかを推測していきます。治療によってめまいやふらつきがどの程度改善されたか調べる際にも役立ちます。

   目の動きを電気的に記録するのは「眼振運動検査」。眼の周りに電極を貼って大きな箱の中をのぞいてもらい、赤い点が左右上下に動くのを目で追ってもらいます。通常、末梢性めまいは、注視をすると眼振がとまることが多いのですが、特定の位置の注視で眼振が起こることもあります。

   左右に動く白い丸を目でしっかりと追ってもらう「指標追跡検査」もあります。目の動きによって、曲線が滑らかだったり、ギザギザになったりします。ギザギザの波形の場合は、小脳や中枢疾患を疑います。同様に左右に赤い点が飛ぶのを見てもらう検査もあります。

いずれも目の揺れだけでなく、眼球の動きがスムーズかどうかも大切です。

(日本臨床検査技師会 町田幸雄)


2009 年 8 月 12 日 by admin

 

   目の前がぐるぐる回る、頭がフワっとする、立ちくらみがするなど、めまいにはいろいろな症状があります。突然襲ってくることが多く、不安になる人も少なくありません。

   めまいの原因には、主に  ►平衡感覚の異常 ►脳の障害 ►生活習慣の乱れ  ►過度のストレスや心の病などがあります。病院の耳鼻科を受診すると「いつ起こったか」「どのようなめまいか」「どのくらい続いたのか」などを尋ねられることと思います。次に、原因を推定し、検査を選択することになります。

   めまいの原因の多くは、内耳やその神経由来のものが多いのですが、一部には大脳小脳頚椎が原因で起こるめまいもあり、きちんと原因を見つけるための検査が必要となるのです。

   問診の後は、採血、耳のエックス線撮影、聴力検査、重心動揺検査などが行なわれます。多くの場合、最初に行われるのが聴力検査で、メニエール病など難聴を伴う疾患を調べる目的です。

   メニエール病は難聴、耳鳴り、めまいが反復して現れる病気です。特に低い音を聞き取りにくい低音障害型難聴が特徴です。その他の検査についても次回後紹介していきます。

(日本臨床検査技師会 町田幸雄)


2009 年 8 月 12 日 by admin

   今回はリウマチの症状を判定、把握するための検査の話です。リウマチの確定診断がなされ、抗リウマチ剤などを用いた治療が開始されると、その薬剤の効果を知るための血液検査が欠かせません。

 一般に、リウマチの炎症の活動性を知る指標の代表は、古くから行われている「赤血球沈降速度測定(血沈)」です。これは炎症の全身状態を見るのに現在でも都合のよい検査です。また「C反応性タンパク(CRP)」も指標として定着しています。

 CRPの数値は、局部の関節の炎症でも鋭敏に数値が動くことが知られています。この二種類の検査で活動性を評価する医師が多いようです。

 また近年よく使われるようになったSAA(血清アミロイドAタンパク)は先の二つの検査よりも使用薬剤の影響を受けず評価することができます。同様にMMP3(マトリックスメタロプロテアーゼ3)は、炎症関節の破壊具合と数値が相関して動くため定期的に測定することに意義があります。

   しかし、どの項目もリウマチ以外の感染症などでも上昇します。血液検査を受ける際には、最近の1~2週間の体調を医師に説明しておくことも大切です。

(日本臨床衛生検査技師会 土居修)


2009 年 8 月 12 日 by admin

 

   関節リウマチ(RA)という病気は、これまで症状が進まないと確定診断がつかない場合がよくありました。早く分かれば進行を食い止められる可能性も高く、患者さんの利点も大きいわけです。そのための新しい臨床検査として「抗CCP抗体」「CARF」という項目を測定するようになってきました。

   先週に紹介した「リウマトイド因子」は、この病気以外の方からも多く検出されるという問題がありますが、「抗CCP抗体」や「CARF」は、陽性ならかなり高い確率でRAであるか、あるいは将来RAに進むことが考えられます。健康保険の適用にもなっています。ただし、陰性であってもRAでないとは断定できません。

   症状の面から調べる検査としては、MRI(核磁気共鳴画像撮影)や超音波も用いられるようになりました。これは、手指関節をよりていねいに撮影することにより、関節中の滑膜という部分のわずかな増殖を観察し、早期のRAを見逃すことなく診断につなげるものです。

   このように医師が触診や問診と臨床検査を組み合わせることで、より早期に確定診断し治療を開始することが可能になってきました。

日本臨床衛生検査技師会 土居修)


2009 年 8 月 12 日 by admin

 

   中高年の女性に多い関節リウマチは、免疫の異常から発症する病気で、全身の関節に炎症が起こり、進行すると痛みや変形を引き起こします。

   この病気を早期発見するために、健診の血液検査で「リウマトイド因子」という項目があります。今回は、誤解されやすいこの因子について説明しましょう。

   リウマトイド因子が陽性だと、自覚症状がなくてもリウマチになったと思い込んで不安になる方がいます。しかし、陽性と確定診断とは違います。

 この病気の臨床検査には「診断を確定するための補助検査」と「病状を判定、把握するための検査」があり、リウマトイド因子は補助検査の項目です。ただし、リウマトイド因子は、免疫グロブリンのひとつであるIgGに対する自己抗体で、感染症や慢性肝臓病の患者さん、一部の健康な高齢者、妊婦さんにもこの抗体は存在します。

 最初にリウマチ患者から発見された抗体なので、別名「リウマチ因子」としてイメージが独り歩きしましたが、現実には、リウマチ患者さんの二割は陰性なのです。

 リウマチは、症状や他の検査を組み合わせて専門医が診断する病気です。リウマトイド因子の検査は、疑いのある人をふるい分けする手段の一つと考えてください。

(日本臨床衛生検査技師会 土居修)


2009 年 8 月 12 日 by admin

 

 輸血は、同じ型の血液で行われることが原則です。しかし、緊急時には他の血液型が使われる場合もあります。A型やB型はAB型の人に輸血することができますし、O型はすべての型に輸血できます。

 アメリカの救急救命室を描いたドラマ「ER」では、緊急輸血の際に「O型Rhマイナス」がよく使われているのにお気づきでしょうか。

  先週に紹介したように赤血球の膜には、AまたはBの型物質が付いており、何も付いていないのがO型なので、O型はどの血液型とも合うのです。また「Rh」は赤血球の細胞の表面に「D抗原」と呼ばれるものがあるとプラス、ないとマイナスになります。Rhプラスの血液をマイナスの人に輸血すると血液中に抗体ができて問題を起こす場合がありますが、Rhマイナスの血液をプラスの人に輸血しても問題はありません。 アメリカではO型の人が45%を占め、Rhマイナスも約17%(日本は0・5%)と多いので、だれにも適合する「O型Rhマイナス」が使われるわけです。

  日本では、緊急時は「O型Rhプラス」がよく使われます。このため、O型の輸血用血液が慢性的に不足になるようです。

(日本臨床衛生検査技師会 及川雅寛)


2009 年 8 月 10 日 by admin


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