検査のはなし

 

 結核は昔の病気と思われがちですが、日本で昨年1年間に新たに結核患者として登録された人の数は24,760人。およそ5000人に1人がかかっているのが現状です。

 検査には、主に喀痰を用います。最初に行われるのは、抗酸菌の有無を確認するための塗抹検査です。抗酸菌とは、結核菌を含む抗酸性の性質を持つ菌の仲間のことです。

 この検査は、スライドグラスに喀痰を塗り付けて、抗酸菌だけが染まる染色を施し、顕微鏡で観察します。

 抗酸菌が見られた場合、それが結核菌かどうか確定するために遺伝子検査を行います。それによって結核の診断が付けば、菌を培養して増やします。結核菌は1回の細胞分裂に約15時間かかります。これは大腸菌の細胞分裂と比べると約50倍の長さです。

 結核菌の培養には約1カ月を要し、入院加療が長期にわたる理由の一つになっています。培養した結核菌は、治療薬が有効かどうかを調べる薬剤感受性検査に使われます。

 塗抹検査が陰性化して、人にうつす危険性が低いと判断されると患者さんは退院となります。このように結核は診断、治療のさまざまな局面で検査が重要な役割を果たします。

(日本臨床衛生検査技師会 小栗孝志)


2009 年 10 月 26 日 by admin


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