近年、微量分析の技術が進歩してきました。これに伴い、投与した薬剤が体内にどれぐらい残っているかを調べ、治療効果の判定や副作用の判断に役立てられるようになりました。これを「TDM」(治療薬物モニタリング )」といいます。
同じ用量の薬剤を投与したとしても、患者さんにより効果が違ってくることがあります。それぞれの薬物代謝酵素の働きや基礎疾患の有無、年齢、性別、体型などによって、違いが出てくるためです。このモニタリングの結果や臨床の所見から、薬の用量・用法を調整していきます。
TDMを行うには、信頼できる測定方法が確立されていることが不可欠で、血中濃度と薬効、副作用の発現の関連が明らかになっている必要があります。現在は、免疫治療剤、抗てんかん薬、心不全治療薬、不整脈治療薬などで行われています。
精神科でよく使われる「気分安定薬」は、血中濃度が高いと副作用が現れやすいため、モニタリングをしながら投与量を決める必要があります。また、薬の種類によっては、血中濃度が急激に上がるものがあります。薬を飲んだり飲まなかったりしている患者さんは、そのことをきちんと医師に伝えることが正しい診断につながります。
(日本臨床衛生検査技師会 真鍋史朗)