検査のはなし

 

 患者さんから採取した微生物の種類を確定するため行うのが「培養」です。

 

 細菌は、寒天や液体の培地に菌が好む栄養を豊富に含ませ、菌を増やします。菌の集落の形状や色、菌の状態などの経過観察も重要です。食中毒の原因となるブドウ球菌は、球形の菌がブドウの房のようになるので、この名が付きました。ウイルスは人工的な培地では増殖しないので、動物や卵を使って増やします。

 

 

 微生物の種類が分かれば、炎症を抑える薬を処方できます。その薬剤の効果を体外で実験することもあります。培地に病原菌を均等に塗り、数種類の抗生物質を間隔をあけて置きます。薬の周囲の菌が発育が悪いほど、有効な薬であるわけです。これを薬剤感受性試験といいます。

 

 

 感受性が証明された菌に対し同じ抗生物質を長く使っていると、細菌が抵抗力を付けることがあります。これを薬剤耐性といいます。20年ほど前、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染の原因として大きな問題になりました。

 

 現在では、各医療機関に院内感染予防の委員会の設置が義務付けられ、対策を講じていますが、細菌の側も変化を続けています。

 

(日本臨床衛生検査技師会 百田浩志)


2010 年 4 月 20 日 by admin


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