検査のはなし

古代ギリシャに端を発した臨床検査は、18世紀に入って飛躍的な発展を遂げます。 尿に関していえば、尿蛋白の存在をイタリアのコツノが明らかにしました。さらに、尿中の尿素の発見、尿糖の検出、痛風患者からの尿酸測定と続きました。いずれも1770年前後から10年ほどの間に西欧で起きた進歩です。

しかし、鎖国状態だった日本は、大きな遅れを取りました。

臨床検査について日本で初めて出された専門書は、1815(文化12)年の「因液發備(いんえきはっぴ)」。蘭方医・吉雄耕牛の遺筆として上梓されました。ここでも西欧の新しい動きは伝えられておらず、体液(尿、汗、だ液など)を外見的に見る検査法など、中世の考え方が中心になっています。

50年もの遅れを取りつつも、西洋医学は少しずつ日本に入っていきました。この時代の書物には、西欧での顕微鏡の医学への応用や血球、精子についての記述もみられます。1859(安政6)年に思想家・佐久間象山が知人にあてた手紙によれば、この時代に少数の医師が検尿を行っていたようです。

日本における臨床検査の発展は、明治期を待つことになります。


2008 年 12 月 19 日 by admin


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